顎関節症の原因と治療法|
あごの痛み・口が開かない
症状を専門医が解説
更新日:2026/07/13
この記事のまとめ
- 顎関節症は、一時的なものを含めて日本人の約10人に1人以上が経験するといわれる身近な病気です
- あごの痛みや不調の約7割は、あごの関節のクッション(関節円板)のズレが原因です
- マウスピースやセルフケアなどの保存的治療で改善する方が多く、悪化したケースはゼロと報告されています
- 気になる症状がある方は、早めに歯科医院で相談しましょう
「あごを動かすと痛い」「口を開け閉めするときにカクカク音がする」「口が大きく開かない」——こうした症状でお悩みではありませんか?顎関節症は一時的なものを含めて、日本人の約10人に1人以上が経験するといわれる身近な病気です。
この記事では、顎関節症の原因やタイプ、セルフチェックの方法、治療法まで、口腔外科専門医が最新のエビデンスをもとにわかりやすく解説します。
目次
1.あごの痛み・口が開かない…
それは「顎関節症」かもしれません
「あごを動かすと痛い」「口を開け閉めするときにカクカク音がする」「口が大きく開かない」
――こうした症状を感じたことはありませんか?

これらは顎関節症(がくかんせつしょう)の代表的な症状です。顎関節症は決して珍しい病気ではなく、一時的なものを含めて、日本人の約10人に1人以上が経験するといわれています。
特に20代~40代の女性に多く見られ、ストレスやデスクワークの増加にともなって患者数は増加傾向にあります。
「そのうち治るだろう」と放置してしまう方も多いのですが、タイプによっては症状が長引き、食事や会話に支障をきたすことも珍しくありません。
この記事では、最新の研究データとガイドラインをもとに、顎関節症の正しい知識と治療法をわかりやすくお伝えします。
参考文献: 島田明子. 咀嚼筋痛障害のマネジメント. 日補綴会誌. 2024;16:239-244. / 一般社団法人日本顎関節学会編『顎関節症治療の指針 2020』 / 同『顎関節症治療の指針 2025』 / Shibuya Y, Umeda M, et al. Kobe J Med Sci. 2007;53(4):171-6.
リンク: 咀嚼筋痛障害のマネジメント PDF / 顎関節症治療の指針 2020 PDF / 顎関節症治療の指針 2025 PDF / PubMed
2.顎関節症には
『5つのタイプ』があります
顎関節症は、痛みや不調が起きている場所によって5つのタイプに分けられます。ご自身がどのタイプに近いかを知ることが、治療の第一歩です。
| タイプ | わかりやすく言うと | 主な症状 |
|---|---|---|
| Ⅰ型 | あごの「筋肉」のトラブル | こめかみやエラのあたりの筋肉がこって痛む |
| Ⅱ型 | あごの「関節の膜」のトラブル | あごの関節を包む膜や靭帯が炎症を起こして痛む |
| Ⅲa型 | あごの「クッション」がずれて戻る | 口を開けるとクッションが戻り「カクッ」と音がする |
| Ⅲb型 | あごの「クッション」がずれたまま | クッションが戻らず、口が大きく開かなくなる |
| Ⅳ型 | あごの「骨自体」の変形 | 長期間の負担であごの骨が削れたり変形する |
| Ⅴ型 | ストレスが主な原因 | 精神的な緊張や不安があごの痛みとして現れる |
約7割は「クッションのズレ」が原因です

神戸大学口腔外科での195例の臨床研究では、受診した患者さんのうち最も多かったのはⅢ型(クッションのズレ)で、全体の約7割を占めていました。
| タイプ | 該当した人数(195人中) | 割合 |
|---|---|---|
| Ⅰ型(筋肉のトラブル) | 28人 | 14.4% |
| Ⅱ型(関節の膜のトラブル) | 7人 | 3.6% |
| Ⅲa型(クッションがずれて戻る) | 91人 | 46.7% |
| Ⅲb型(クッションがずれたまま) | 44人 | 22.6% |
| Ⅳ型(骨の変形) | 25人 | 12.8% |
「あごがカクカク鳴る」「口が開きにくい」という方は、このクッション(関節円板)のズレが原因である可能性が高いといえます。
根拠論文: Shibuya Y, Takeuchi J, Ikehata N, Akashi M, Fujita T, Yokoo S, Umeda M, Komori T. "A clinical study of temporomandibular joint disorders -an analysis based on the Japanese subtype classification-." Kobe J Med Sci. 2007;53(4):171-6.
リンク: Kobe Journal of Medical Sciences(全文公開ページ)
3.なぜ女性や
若い世代に多いのか?

かつては「噛み合わせの悪さ」だけが原因と考えられていましたが、現在ではいくつもの原因が重なり合って発症することがわかっています。
よくある3つの原因
① 歯ぎしり・食いしばり(ブラキシズム)
寝ている間に無意識に歯を食いしばると、食事のときの何倍もの力があごに加わり続けます。朝起きたときにあごがだるい方は要注意です。
② 無意識に歯を合わせる癖(TCH)
意外に思われるかもしれませんが、上下の歯が1日に触れている時間は合計20分未満が正常です。パソコン作業中やスマホを見ているときに、気づかないうちに歯を軽く噛み合わせていませんか? 力は弱くても、長時間続くとあごの筋肉や靭帯に大きな負担がかかります。
③ ストレス
仕事や人間関係の緊張は、無意識の食いしばりを引き起こします。ストレスを感じるとあごがこわばる、という方は珍しくありません。
どれくらいの人がかかるのか?
厚生労働省の資料として報告された就労者2,423名を対象とした調査では、6人に1人(16.4%)が顎関節症に該当しました。
また、195例の臨床研究では男女比が1:3(男性50名に対し女性145名)で、平均年齢は38.1歳。20代~40代の女性に圧倒的に多い病気です。
| 性別 | 特に影響が大きかった要因 |
|---|---|
| 男性 | 不安感、疲労が続く、歯を合わせる癖(TCH)、朝起きたときのあごの不調 |
| 女性 | 疲労が続く、朝起きたときのあごの不調 |
根拠資料: 厚生労働省「一般健康診断に『歯科』を盛り込む必要性について」(2024年) / Shibuya Y, Umeda M, et al. Kobe J Med Sci. 2007;53(4):171-6.
リンク: 厚生労働省PDF / Kobe Journal of Medical Sciences(全文公開ページ)
4.セルフチェック:
あなたの「あご」は大丈夫?

以下の項目に心当たりがあれば、歯科医院への相談をおすすめします。
あごの3大サイン
- あごを動かすと痛い(食事中、あくびのときなど)
- 口を開け閉めするときに音がする(カクカク、ジャリジャリなど)
- 口が大きく開かない(指が縦に3本入らない)
日常生活のチェックポイント
- パソコンやスマホを使っているとき、上下の歯が触れていないか
- 寝ている間の歯ぎしりを家族に指摘されたことはないか
- 頬杖をつく癖はないか
- ストレスを感じたとき、無意識に歯を食いしばっていないか
- 睡眠不足や疲れが溜まっていないか
歯科医院でできること
- 問診と触診であごの状態を評価
- レントゲンで骨の状態をチェック
- 必要に応じてMRI検査(クッション=関節円板の位置を確認)
- マウスピースの作製・調整
- 症状に応じて口腔外科の専門医をご紹介
参考文献: 一般社団法人日本顎関節学会編『顎関節症治療の指針 2020』 / 同『顎関節症治療の指針 2025』 / 日本補綴歯科学会 顎関節症に関するガイドライン
リンク: 顎関節症治療の指針 2020 PDF / 顎関節症治療の指針 2025 PDF / 日本補綴歯科学会
5.顎関節症の治療法
基本は「あごに負担をかけない治療」から
顎関節症の治療で最も大切な原則は、「まずは体に負担の少ない方法から始める」ことです。これは国内外の診療ガイドラインで共通して推奨されている方針です。

マウスピース(スプリント)療法
就寝時にマウスピースを装着することで、あごの関節や筋肉にかかる過度な負担をやわらげます。195例の臨床研究でも最も多く使われた治療法で(99例)、治療を受けた患者さんの半数以上で改善が確認され、悪化した症例はありませんでした。
ストレッチ・セルフケア
あごをゆっくり開け閉めする訓練や、こっている筋肉をほぐすマッサージ、日常生活で歯を合わせる癖(TCH)を減らす意識づけなどを行います。
痛み止め・筋肉をゆるめる薬
痛みが強いときには、一時的に消炎鎮痛剤や筋肉の緊張をゆるめる薬を使うこともあります。
保存的治療で改善しない場合
上記の治療を1ヶ月ほど続けても症状が改善しない場合は、より専門的な処置を検討します。
- 関節洗浄:あごの関節内を生理食塩水で洗い流して、炎症を起こしている物質を取り除く
- 関節鏡手術:小さなカメラであごの関節の中を直接確認し、必要な処置を行う
あごの変形がある場合の手術
受け口などのあごの骨格自体に問題がある場合は、骨を切ってかみ合わせを根本から整える手術(IVRO:下顎枝垂直骨切り術)が選択肢になります。
この手術は、あごの関節に比較的優しい術式として知られていますが、術後にあごの関節の先端がずれ落ちる(下顎頭沈下)リスクがあります。
研究では、57人(114関節)の手術データを統計分析し、どんな患者さんにこのリスクが高いかを事前に予測できる指標を明らかにしました。
| リスクが高まる条件 | 統計的な裏付け |
|---|---|
| 骨の移動量が3.25mm以下と小さい | P = 0.032(統計的に有意) |
| 手術前からあごの痛みや音などの症状がある | P = 0.007(統計的に有意) |
この知見により、手術を計画する段階でリスクの高い患者さんを見分け、術後の管理をより慎重に行うことが可能になりました。
根拠論文: Rokutanda S, Yamada SI, Yanamoto S, Sakamoto H, Omori K, Rokutanda H, Yoshimi T, Fujishita A, Morita Y, Yoshida N, Umeda M. "Predisposing conditions for condylar sag after intraoral vertical ramus osteotomy." Scientific Reports. 2021;11(1):10463.
リンク: Scientific Reports(全文公開ページ)
6.受診を迷っている方へ

顎関節症は、適切な治療を受ければ大部分の方が改善する病気です。
大切なのは、「あごが痛いくらいで病院に行くのは大げさかな」と自己判断しないこと。
特に以下の症状がある方は、早めの受診をおすすめします。
- 口が開かなくなった
- 痛みが強くて食事ができない
- あごの形が左右で違ってきた
- 症状が2週間以上続いている
当院では、あごの状態を丁寧に診察し、必要に応じて画像検査や専門の医療機関へのご紹介を行っています。一人で悩まず、いつでもご相談ください。
参考文献: 一般社団法人日本顎関節学会編『顎関節症治療の指針 2020』 / 同『顎関節症治療の指針 2025』
リンク: 顎関節症治療の指針 2020 PDF / 顎関節症治療の指針 2025 PDF
免責事項:この記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の医療アドバイスではありません。 顎関節症の症状や適切な治療法は、患者様の症状の程度やタイプによって異なります。 気になる症状がある方は、歯科医院で医師の診察を受けてご確認ください。
この記事の監修者
歯科医師/長崎大学・愛知学院大学歯学部教授/日本口腔外科学会 認定専門医・指導医。口腔外科の専門家として監修。
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7. よくある質問(FAQ)
顎関節症は何科に行けばいいですか?
- まずは歯科医院を受診してください。マウスピースの作製や基本的な診断は一般の歯科でも対応できます。治りにくい場合は、口腔外科の専門医をご紹介します。
放っておけば自然に治りますか?
- 軽い症状であれば自然に良くなることもあります。ただし、そのまま放置すると慢性化して治りにくくなるケースも少なくありません。特に「口が開かなくなった(クローズドロック)」場合は、早めの対応が重要です。
マウスピースだけで治りますか?
- 多くの方に効果がありますが、あごの骨の変形が進んでいる場合などは、それだけでは不十分なこともあります。マウスピースに加えて、ストレッチや生活習慣の見直しを組み合わせることで効果が高まります。
どのくらいで良くなりますか?
- 症状のタイプや重さによりますが、マウスピースやセルフケアで改善する方は1~3ヶ月ほどで効果を実感されることが多いです。長期間つらい症状が続いている場合は、じっくり取り組む必要があることもあります。
治療費は保険が使えますか?
- マウスピース、痛み止めの処方、レントゲンなどの基本的な治療は保険適用です。
監修者

歯科医師:梅田 正博
| 1983年 | 東京医科歯科大学歯学部 卒業 |
| 1987年 | 神戸大学医学部大学院 修了 |
| 1997年 | 神戸大学医学部助教(手術部) |
| 1998年 | 神戸大学医学部講師 (口腔外科学) |
| 2000年 | 神戸大学医学部准教授 (口腔外科学) |
| 2011年 | 長崎大学大学院教授 (口腔腫瘍治療学) |
| 2024年 | 愛知学院大学歯学部客員教授(口腔先天異常学研究室) |
| 資格 | 日本口腔外科学会 認定専門医・指導医 |
|---|
さくら会には大学教授を勤めた歯科医師(梅田 正博)が在籍しております。
口腔外科全般・口腔癌・顎骨壊死・口腔ケアが専門の歯科医師になります。
日本口腔外科学会の専門医の資格も有しておりますので、梅田による口腔外科治療や口腔ケアをご希望の方は、ありす歯科までご相談ください。
ありす歯科-



ご予約
さくら会ではなるべく患者様をお待たせしないよう、ご予約優先制となっております。 ※ネット予約は初診の方限定です。
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来院
初診の方は問診票記入の為にご予約時間より10~15分程度早くご来院をお願いしております。 また、保険証・医療券・お薬手帳などをお持ちいただき、受付にてご提示ください。
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カウンセリング
最初は現在お口の気になる症状などを担当スタッフがお聞きいたします。お悩みやご相談がある方はお気軽にご相談ください。伺ったお話をもとに治療計画を作成いたします。わからないことがある方は、ご質問もしていただけます。
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診療
初めての方は、まずレントゲン撮影と検診を行います。 その後、衛生士による口腔内のお掃除をさせていただく場合もあれば、痛みや腫れがある場合は症状が和らぐよう処置をさせていただく場合もございます。
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お会計
処置終了後、そのまま次回のご予約をお取りします。新しい診察券をお渡しいたしますので、次回はそちらを受付までお持ちいただきます。お会計を受付もしくは自動精算機で済ませてお帰りください。





















